乾式7速DSGがジャダーを起こす理由
大変お世話になっております。ゴルフ5TSIに乗り続けるゴルフマンです。
乾式7速DSGのクラッチがジャダー(断続的な滑り)を起こす理由は、エンジンの回転力をトランスミッションに伝達するクラッチ機構のクラッチ板の「摩擦力」が低下してしまうからです。
クラッチ板の摩擦力が低下するおもな原因は以下の2つです。
1.クラッチ板の「摩擦力」が低下する原因は、おもに、長く使用したことによるクラッチ板の摩耗です。しかし、この摩耗は動力の伝達にクラッチを使用している車に乗っている以上避けられません。どんなに丁寧に運手したとしても最終的にはクラッチ板は摩耗して滑り出します。
2.その他に、半クラッチの多用による摩擦熱でクラッチ板の表面を硬化させてしまう「焼き付き」も摩擦力を低下させる原因になります。発進と停止の繰り返しや上り坂での発進には注意が必要です。ただし、こちらは乗り方に注意するだけで防ぐことができます。
乾式7速DSGと「半クラッチ」
乾式7速DSGのクラッチ操作は完全に自動化されているので「半クラッチを使い過ぎてクラッチ板が焼き付くことはないのでは?」と思うかもしれませんが、実はそうではありません。
実際に乾式7速DSGに乗ると気付くと思いますが、どれだけクラッチの操作が自動化されても、乗り方や道路状況によって、まだまだ半クラッチが多用される場面が存在するのです。
「半クラッチ」が多く使われる場面
乾式7速DSGが「半クラッチ」をよく使うのは以下の場面です。この時の乗り方を工夫することで「半クラッチ」を減らすことができ、結果としてクラッチ板の寿命を伸ばすことができます。
- 発進時・・・停止状態から動き出すまで
- 徐行中・・・疑似クリープで動いている状態
以上の2つです。
「半クラッチ」を減らすための対策
乾式7速DSGのクラッチ板を少しでも長持ちさせたいのであれば、ドライバーは交通状況に合わせて乗り方を工夫し、DSGに使用させる「半クラッチ」の量をできるだけ減らさなければなりません。
① 発進はスローに
停止状態からの発進では必ず半クラッチが使われます。この時にアクセルを大きく踏み込んでしまうと、勢いよく回転しているエンジンにクラッチ板を無理に押し付けることになるため、急発進になるだけでなく、摩擦でクラッチ板に高い熱が発生します。
これが繰り返されてしまうと、クラッチ板の摩耗が早くなるだけでなく、クラッチ板の表面が焼き付いて硬くなり、エンジンの回転を受け止めることができなくなり、最後はクラッチが滑り出してジャダーが発生します。
~ 対策 ~
発進の際は、ブレーキペダルから足を離したら、できる限り「疑似クリープ*」で車がゆっくりと動き出してから、アクセルペダルを踏むよう心掛けてください。
*疑似クリープ・・・アクセルペダルを踏まなくても車が前に動き出すトルクコンバータ車の特徴を乾式7速DSGで疑似的に再現したもの。
② 疑似クリープ中も注意する
疑似クリープで動き出した後も、アクセルペダルを踏むまではずっと滑らない程度の「半クラッチ」が使われているので、大きな負荷をかけないように注意します。
なぜ、疑似クリープでの徐行時にも半クラッチが使われるのかというと、徐行中というのは急にブレーキをかける可能性が高く、完全にクラッチをつないでしまうと、ブレーキの力でエンジンが止まってしまったり、クラッチに直結されているクラッチやミッションを傷めてしまう危険性があるからです。
~ 対策 ~
疑似クリープ中は、できるだけクラッチに負荷をかけないようにします。緩い上り坂でも必ずアクセルペダルを踏んで上りましょう。
③ 急な上り坂での渋滞は最大の敵
発進と徐行を繰り返す「渋滞」はクラッチにとって厳しい状況ですが、その中でも、急な上り坂をじりじりと上り動き続ける渋滞はまさに最悪です。
なぜなら、完全に停止することなく動き続けるため、半クラッチで熱くなったクラッチ板を十分に冷やすことができないからです。そして、最悪の場合はクラッチ板が焼き付きを起こしてしまい走行不能に陥ります。
~ 対策 ~
急な上り坂で渋滞に巻き込まれたら、まず、マニュアルモードに切り替えギアを1速にするのはもちろんですが、前車との車間距離がある程度開くまで車を発進させないようにして、できるだけクラッチ板を冷やす時間を作りましょう。
もし、冷やすことができない渋滞だとわかった場合は坂を上るのをあきらめてUターンするか、車を路肩に止めてクラッチを冷やします。
5.今回のまとめ
乾式7速DSGがどんなに進化しても、エンジンの動力伝達に乾式の摩擦クラッチが使われている以上「半クラッチ」も半クラッチの使い過ぎによるトラブルも無くなることはありません。
しかし、乾式7速DSG車を「シフト操作とクラッチ操作が自動化されたマニュアル車である」と認識して乗ることができれば、深刻なトラブルに陥ることはまずありません。
ということで、ぜひ、この記事を乾式7速DSG車をできるだけ長く快適に走らせるための参考にしてください。
END