乾式7速DSGの正しい乗り方

VWゴルフのオーナーが乾式7速DSG車の乗り方を研究しているブログ

VCDSログ解析「徐行時(疑似クリープ時)のクラッチ動作と温度を調べる」

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1.疑似クリープ中のクラッチ温度を調べる

ご無沙汰しております。マイゴルフ5の持病(低速時のギクシャク)に頭を悩ませているゴルフマンです。

その後の持病の様子はというと、最も良かった時と最も悪かった時のちょうど中間くらいの状態で落ち着いていますので、多少の不満はあるものの、ひとまずは安心といったところです。

さて今回は、アクセルを踏まない状態で徐行する「疑似クリープ」中のクラッチの動きと温度の2種類のログデータをVCDSケーブルで取得し、それを無料の表計算ソフト「Open Office Calc」でグラフ化して解析しました。

都市部を走行することが多く「渋滞」に巻き込まれやすい・・・という方はぜひ参考にしていただければと思います。また、休日に山間部の観光地や行楽地へ向かう予定の方にもおすすめの記事です。

2.フラグ解析

それでは、さっそく今回解析したグラフを見てみましょう。

  • グリーン・・・クラッチ1の温度(1,3,5,7速用)
  • オレンジ・・・クラッチ2の温度(2,4,6,R速用)
  • ブルー・・・クラッチ1の移動量(1,3,5,7速用)
  • ピンク・・・クラッチ2の移動量(2,4,6,R速用)

2.1 VCDSログを解析したグラフ

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2.2 テスト車(ゴルフ5)の動き

坂道の手前10メートルの位置に車を停めてテスト開始です。ブレーキペダルから足を離し「疑似クリープ」だけで徐行開始。坂道手前の平坦な道を10メートルほど進み、そのままアクセルを踏まずに「疑似クリープ」だけで30メートルほど続く坂道(勾配15%前後)を上ります。※坂の途中で一度だけ一時停止しています。

2.3 グラフから分かること

グラフ下部が青色の部分は平坦地です。ここではクラッチ1と1速ギアでの徐行が長く続きましたが、負荷が少ないためどちらのクラッチも温度の上昇はみられません。また、休んでいるクラッチ2の温度はゆっくりと下がっているのがわかります。

次に、赤色の「上り坂」に差し掛かりますが、上りはじめてすぐに1と2のクラッチが忙しく交互に動作し始め、それに合わせて1と2のクラッチ温度が段階的に上昇しています。その後、クラッチの温度上昇は坂道を上り終えるまで続き、最終的に、上る前に比べて30℃近く上昇しています。

2.4 温度上昇の原因は坂道の角度(勾配)

しかし、なぜ30メートルほどの坂道でクラッチの温度が30℃も上がってしまったのでしょうか?

それは、グラフをみるとわかります。上り坂に入るとすぐに1と2のクラッチが交互に動作を始めています。1と2のクラッチが交互に動作するということは、1速ギアと2速ギアを行ったり来たりしているということになります。

ギアが1速と2速を行ったり来たりするということは、その度に「半クラッチ」が使われ「摩擦熱」が発生します。その摩擦熱がクラッチ板の温度を少しずつ上昇させ、最終的に「+30℃」という温度の上昇になってしまったのです。

3.温度上昇の原因は「坂の角度」

では、なぜDSGは1速と2速のギアを行ったり来たりしてしまうのでしょう?

その原因は、この坂道の勾配にあります。簡単に言えば、この坂道の角度(勾配)が『1速では上れても2速では上れない(魔の)角度』だからです。

グラフを見ると、DSGは坂道を上っている途中ずっと2速へのシフトアップを試みていますが、2速ギアでは十分な登坂力が出ないためすぐに1速にシフトダウンしています。しかし、1速ギアでは力が余ってしまうため、再び2速へシフトアップしますが、同じ坂道ですから、やはり十分な登坂力が得られず再度1速にシフトダウンしてしまいます。

あとは、坂道が終わるまでこの動作の繰り返しですが、もし、この坂道が30メートルではなく、数百メートル、数キロメートルも続く観光地や行楽地の山道だったとしたらどうなっていたでしょう?

いくら丈夫に作られているとしても、クラッチ板が最後まで無傷でいられるとは思えません。

ただ、この問題が起きるのは特定の角度の坂道を「疑似クリープ」だけでソロリソロリと長く上る場合に限ってのことですので、そう頻繁に起こるものではないと思いますが、万が一に備えて対策を考えておいた方が良いでしょうね。

4.魔の坂道の渋滞にハマった時の対処方法

今回の場合は、1速ギアと2速ギアの行ったり来たりによる「半クラッチ」の多用が問題でしたので、シフトレバーを「MTモード」に切り替え「1速」だけで上り続けるようにすれば、無駄な半クラッチが使われなくなり、クラッチの温度上昇は抑えられるはずです。

1速で走行するためギクシャクして少し乗り心地が悪くなるかもしれませんが、渋滞の中でクラッチが焼き付いて車が動かなくなるより断然良いでしょう。

5.備考・その他

最後に、クラッチの温度が上がる魔の坂道の判別方法ですが、これは、疑似クリープ中にメーターパネルのギアポジションのインジケーターが1と2を交互に繰り返すのですぐにわかると思います。

 

END